包日記

包kurumiフラワーデザイナー五十嵐のブログ

くそじじぃとの出会い

なんとも下劣なコトバを使ってスミマセン。
ふ、と思い出した「くそじじぃ」の事を書こうと思いまして…


くそじじぃは私が花屋になりたての頃出会ったおっさんです。
そう。
ある意味「出会い」だったと思います。


花屋の店頭には花鉢などの鉢物が並んでいます。
くそじじぃは店内には入って来る事はなく、店の外から「よー!ちょっとネエちゃん」
と店内にいる私を呼びつけ、もちろんお客様かと思う私は走って駆け寄ります。
すると、
「この花はなんて名前?」
「育て方は?」
と質問してきます。
そして当然、私は答えていきます。
くそじじぃは並んでいる商品の名前と育て方を次々と聞きます。


ところが。
質問するだけで、よそ見をしながら上の空で「ふーん」と言い、私の回答を最後まで聞かずに次の商品の質問をするのです。
要するに知りたくて聞いているのではないのです。
でも、お客様に失礼な態度は取れませんので真面目〜に答えていました。
わりと順調に答えていたと思います。


すると突然、くそじじぃは質問を変えてきました。


「で、この花の原産国は?」


う。そこまで知らない。
もちろん、くそじじぃは原産国など知りたいのでは無い事は、さすがの私でも気付いていましたよ。
でも答えられないのです。


「申し訳ございません。今すぐには分からないです。お時間いただければ店内で調べて参りますが…」


知らないから、そうとしか答えられなかったのです。
うぇ〜ん「ぎゃふん」だー。


そしたら、そしたら!


「勉強不足だね。ちゃんと勉強しとけっ!!」


と凄い形相で吐き捨てて帰っていきました。


そうです。
この瞬間私は「くそじじぃ」と命名しました。


「私を撃退するのが目的であのじじぃはやって来たんだぁ。
ち・ちくしょーっ。くそじじぃ。次は絶対勝ってやる!!覚えてやがれーっ!!!」


その日の晩、植物辞典を片手に店頭にある鉢物の知り得る情報をメモ帳に全部書き写しました。
くそじじぃはもう二度と来ないかもしれないけど、万が一の襲撃の再来に備えて、鉢物が入荷する度にメモしていきました。


そしたら、来たんですねぇ。くそじじぃ。
例のごとく、質問攻撃です。
例のごとく、私の答えは聞いていません。


くそじじぃ 「で、この花の原産国は?」
私 「熱帯アジアです」
くそじじぃ 「こっちは?」
私 「南アフリカです〜。でもこちらはパプアニューギニアの高原ですので日差しが強くないところでもきれいに花を咲かせますよ〜」
くそじじぃ 「・・・」


はい。無言で帰っていきました。
もちろん何も購入しませんでしたが、その寂しそうな背中を見送りながら私は勝利に浮かれ心の中ではバンザイ三唱ですよー。


その後もくそじじぃ対策は続きました。
不意をうってまた逆襲に来るかも。と思ったので。


でも、くそじじぃはもう来る事はありませんでした。
今でも扱う商品について調べるクセがついているのは、実はこのくそじじぃとの戦いがきっかけです。
包日記で紹介している植物も、そのせいで、ちょっと理屈っぽくなっちゃったりしていると思います。

案外知っていると面白い事に気付いたりもするんですよ。
花のデザインとは関係ないんですけどね。


そう考えると、あの時は猛烈に腹が立ちましたが、くそじじぃは私の花屋人生におけるポイントとなる人物なんですよね。


どんな人であれ無意味に出会う事はないと私は考えています。
くそじじぃまでもが、そうだった。


くそじじぃよ、ありがとう。
もしかして家か仕事で嫌な事があって腹いせに攻撃しに来たのかもしれないけれど、私が勝利しちゃったから役に立てなくてスミマセン。
余計にストレスとなった事でしょう。
でも、あなたは確実に私の役に立っていますから。
感謝。